2024年5月26日日曜日

ヤフオク訴訟


5月15日の朝日新聞に、ヤフオク出品者を提訴した記事が目を引いた。私は中古品の流通については大賛成だ。必要としない品物を必要だと思う人が安価な価格で購入するのは、両者に大きなメリットがあると思っている。
この度の提訴は売り手の側が「未使用に近い」とし、画像を8枚添付し25万円で販売したが、実際には、ほかにも傷が数か所あったとし、買い手が返品を申し出たが、売り手の側が「財布の機能に問題はない」として返金に応じなかったため、買い手は不誠実な対応をされたとして出品者に148万円の損害賠償を求めた裁判だ。
 判決は「出品に対する商品説明の詳細は出品者に委ねられている」とし、さらに、商品状態の記載は「あくまでも一つの目安ないし参考情報」と指摘をし、添付された画像の傷以外に原告側が主張している傷は極めて軽微で、実際に一度使用した中古品であることを鑑みると契約不適合があったと認められることはないとの判決だった。要するに、中古品なのだから、写真に示されていない傷がわずかにあったからといって、損害賠償というほどではないという内容だ。
 思うに、148万円という額は不誠実な対応に対する損害額にしては高すぎる。また、返品を請求された出品者も、早々に25万円を返して白紙に戻すべきだ。
 中古品には傷などの何らかの劣化が必ずあるため、本来、売買は現物を見て判断するのが原則だ。売り手と買い手が直接会って、現物を確認して金銭を払って決済すべきだ。離れたもの同士が画像を説明文だけを頼りに、高額な商品の売買を決めるなどというのは、ある意味、冒険だろう。ヤフオクやメルカリは「もったいない」という美徳を持っている私たちにとっては好ましい制度だと思う。しかし、私も一度、嫌な思いをしたことがあり、嫌な思いをするたくさんの人が出てきて、メディアで報道されると、出品者も買い手も縮小し中古市場の衰退を招きかねない。ヤフオクやメルカリは、さらに安心な制度を考えるべきだ。例えば、郵送などで送られた現物を見て、思ったものと違いう場合は返品できる制度をすべての売買に適応すべきである。中古クーリングオフ制度は必須だろう。煩雑になることも出てくるが、安心感は利用者の増加と制度の維持には欠かせない。

2024年4月30日火曜日

国政が変わる

 

島根県で演説する岸田首相
昨年11月に死去された細田博之の補欠選挙が4月28日に行われ、立憲民主党の亀井亜紀子氏が当選した。自民党公認の対立 候補は錦織功政氏だ。与野党対決の構図となって全国が注目し た。安部派のパーティー券の販売ノルマ超過分を所属議員に還 流させ、収支報告書に記載せず、政治資金規正法に違反する行 いが明るみに出た矢先、この事件が国政に影響すると誰しもが思ったはずだ。
 岸田内閣の支持率は20%切ってしまい、今度こそ政権交代が起こる前触れと注目したはずだ。島根県は全国で唯一、自民党が選挙区の議席を独占してきたが、果たして、初めて議席を失うことになった。亀井亜紀子(立民・元)当選 8万2691票、錦織功政(自民・新)5万7897票だった。
  早速、島根に住む親類の家に電話してみた。「県民は自民党を好きではなくなっている」「自分も個人的に、特に岸田首相の政策が好きではない」とのこと。父や祖父母の代からの支持を裏切ると、再び信頼を回復するには時間がかかりそうだ。自民党は次の総選挙で第1党から落ちそうだ。
  自民党はかつて2度「下野」(野党に転落)したことがある。1993年にリクルート事件、東京佐川急便事件などといった「政治とカネ」の問題が起こり、国民は自民党に失望し、自民党は過半数を割り、非自民非共産の8党派の連立政権ができた。
2009年には小泉純一郎氏が党総裁の任期切れに伴い首相を辞め、その後、安倍晋三氏、福田康夫氏と、1年で政権を投げ出す首相が続いたことが原因で、国民は自民党に失望した。民主党は308議席、対する自民党は119議席。
  私はかねてから政治は変革が大切だと思う。同じ党が長く政権を担うより、別の党が政権を獲得したり取り返したりしてはどうか。切磋琢磨という言葉がある。為政者たちはお互いに磨きあってこそ国民に寄り添った政治となる。また、有権者は政権を選び取るという権利を持っていると同時に、自ら生み出した「新しい政治」を国民として厳しく見詰め、日本の民主主義を鍛えていく責任も負っている。傍観者としてではなく主体的に政治を変革する担い手であるべきだ。理想と現実は違うと叱られそうだが、そう思いたい。
 島根の投票率を見てみよう。54.62% 衆議院の小選挙区制導入以降、最低だったそうだ。前回、3年前の選挙を6.61ポイント下回った。半分くらいの人が権利を行使しなかった。政治を生かすも殺すも国民の政治に対する関心である。

2024年3月17日日曜日

核融合発電


朝日デジタル新聞より






 
 2004年東京地裁の判決で「小企業の貧弱な研究環境の下で、個人的能力と独創的な発想により・・・世界的発明を成し遂げた稀有(けう)な事例だ」として青色LEDの発明者に会社が200億円を支払うように命じた判決文の一部だ。稀有な事例の主人公は世界中が科学者として尊敬をやまない中村修二先生だ。
 先生が今取り組んでいるのは核融合発電だ。「核」といっても従来の核分裂の熱を利用するものとは違い、レーザーを使い炉の中で核融合反応を起こし、高速で飛び出してくる中性子を厚さ1mのブランケットと呼ばれる部分で受け止める。ブランケットで受け止められた中性子は速度を落とし、その落ちた速度に相当するエネルギーが熱に変わるそうだ。この中性子の運動を熱源に変えるところが従来の原子力発電と異なる点だ。原子力発電は核分裂だ。一気に分裂させると原爆である。
核と聞くとすぐに「危険」というのが第一印象だが、中性子しか発生しない装置では危険はない。また、何かが起きてもレーザーを止めれば融合は止まる。実用化は今世紀の中ごろ以降だそうだ。
 先生は朝日新聞のインタビューで「戦争を防ぎたい」とおっしゃった。すべてではないが、エネルギーに絡む利権の問題が、多くの戦争の背後にある。核融合発電が実用化されると、資源を独占している数少ない国の影響力が徐々に減る。いつか大きな国も小さな国も必要に応じた電力が自給自足で生産可能になる日も夢ではない。
 そんな先生は今、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校の材料物性工学部教授である。リクナビNEXTの取材で、先生は「アメリカの学生は大きいリターンを期待する人は独立するし、そう望まない安定志向の人は大手企業に行く」と述べている。さらに、「日本は悲惨で、誰もが大手企業に入りたがって、優秀な人もそうでない人も『永遠のサラリーマン』をやっている」と続けている。
 でも、悲惨と言われると、少し悲しい。「自分で考えた発明を自分の力であることを明確にし、発明したものをさらに育て、会社を作って生産ラインを構築し、広く世に普及させ、名を馳せる。」まさにアメリカンドリームだ。この前提に日本の学生を見ると確かに悲惨かもしれない。
 先生がアメリカで研究を続けているのは理解できる。たぶん、先生のような偉業を目指す若者の指導に携わり、かつ、ご自分の研究も進めやすいのだと思う。全人類のため頑張ってください。
 ところで、先生にお願いがあります。今の日本の教育の仕組みでは相変わらず『永遠のサラリーマン』は続きます。小学生くらいのころから、能力や考え方で突出する子にうまく対応できていないようです。もっと自由な発想を育てないとカリフォルニア大学の生徒のようにはならないと思います。義務教育のあり方に立ち返って、独立心を育てる教育内容のご提言をお願いできないものでしょうか。

2024年2月25日日曜日

政治不信

 自民党の、特に安部派の方たちが、「裏金」を作っていた。法学部卒の血が騒いで、法律を調べた。政治金収支報告書に記載せず迂回献金即ち「裏金」が確定すれば、政治資金規正法違反だけでなく、税務申告を懈怠(けたい=なまける)した場合には「所得隠し」となり脱税犯罪(所得税法第238条違反)となる。
 政治資金規正法に定める罪を犯し、禁錮刑に処せられた者は裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間とその後の5年間公民権の停止 ②罰金刑に処せられた者は裁判が確定した日から5年間の公民権の停止③ これらの刑の執行猶予の言い渡しを受けた者も公民権を停止。公民権とは国政に参加する権利のことだ。たとえ執行猶予付きの判決でも政治家にとっては致命的だ。
 初めにこの問題を暴露したのは共産党の「しんぶん赤旗」で昨年の日曜版。11月6日のことだ。この時の見出しは紙面2ページにわたり、「パー券収入、脱法的隠ぺい2500万円分不記載」と報じた。
 その後、東京地検に告発をしたのが神戸学院大学 上脇教授。ブルーグレーのバンダナヘッドが可愛さと凄みを漂わせる。「政治とカネを問う」の題名でYoutubeに1月19日にアップロードしておられる。1ヵ月前に3.2万回の視聴を記録した。
 さらに、キックバックのキャッチ(フレーズ)で、政治資金規正法違反の疑いを派手にマスコミ各社も報道した。打ち上げ花火の連打だ。
 不正を報道する時、カタカナや日常生活で使う言葉をあえて使い、権力者を「ただの人」扱いをして人格を失墜させる。政治の世界は一般人からすると身近ではない。すごい世界だ。そこに、民間の会社で日常的に行われているキックバックという言葉を使うことで、「商売」イメージで表現し、公人なのに「利益に走った」という印象を視聴者に与える。
 もちろんキックバックやリベートは違法ではない。実際のビジネスシーンでは行われている。 「うちの商品を今期中に100個売ってくれたら、売り上げの10%を返礼にお受け取りください」といったように、基本的に販促目的で行われる。小売りの側はキックバックを目標に一生懸命売る。会社に黙って個人が受け取ると背任罪などになる。
 高校生諸君はどうおもっているのだろう。「社会性の育成を重視し、自由と規律のバランスの回復を図ることが重要である。」(文科省の重要提言:国民会議報告H12.12)自由は一定の規律のなかで確保されるべきである。悪いことをしたら、罪を認めて誠実に「謝罪」することは人として当然だ。
 2022年4月26日に高校生を対象にラインユーザーを対象にスマホweb調査が実施された。有効回収数は998人だった。「もし政治家になれるとしたらなってみたいと思うか」、率直な意見を聞いたところ、「まったくなってみたいと思わない」51%で、「どちらかといえば、なってみたいと思わない」28%を合わせた、高校生が「政治家になってみたいと思わない」は8割弱(79%)だとわかった。一方で、「ぜひなってみたいと思う」6%だった。人気の仕事ではないようだ。志向館で一部の生徒に聞いてみたことがある。誰もいなかった。
 人気の仕事は「国家公務員・地方公務員」「教師・教員・大学教授」「システムエンジニア・プログラマー」がトップ3だ。「知的」で「安定」しているのがイメージだと思う。私も大学教授になりたかったので、気持ちはわかる。
 政治の世界に優秀な人格者が入ってほしいと切望している。この度の騒動で最大の罪は政治的権威や信頼感の失墜を招いたことだ。この度ばかりでなく、過去を振り返っても、政治の世界には数多くの不祥事が蔓延している。政治が狂った方向に走れば、そんな世界に入ろうと志す優秀な人材はいなくなる

2024年1月29日月曜日

能登半島地震

 大地震がきた。能登半島地震だ。私の住む金沢市は一部の地区を除いては多くの家屋が倒壊したり、大火が襲ってきたりしなかった。しかし、金沢でも震度5強。かなりの揺れが30秒ほど続いて、だんだん弱まった。体に感じる揺れは1分ほどだったと思う。1月1日の16時10分は正月特訓の最中で、寺町校と城北校で100名は校舎にいた。受講生のスマホは一斉にアラームが鳴り響き、みんな机の下にさっと入った。幸い志向館の建物の被害はなかった。
 金沢に住む人は能登に親族を持つ人が多い。私が授業を担当する約40名の生徒の中で、能登に親族がいたのは13名にも達した。こんなことは生徒に聞いたことがなかったので本当に驚いた。能登は農業者や漁業者の多い中、仕事を求めて金沢に出てきて、定住した人が多いのは、人々の再配置を改めて自覚する機会となった。
 9年前に珠洲に親戚ができた。私の次女が珠洲の大谷地区出身の方と結婚をしたからだ。娘の結婚相手は金沢で就職したといっても珠洲で一人暮らしをしている先方のお父様から、長男を奪った感じがして申しわけなく思った。
 震災直後、珠洲のお父様とは約10日ほど連絡が取れなかったが災害ボランティアに行った人から無事だと聞いて安堵した。スマホが通じず、連絡がとれなかった間、自宅が倒壊して生き埋めになったと思い、長男は危険を承知で自家用車で大谷地区に行く計画をしていた。
 災害が起こると、皆、被災地の関係者の安否確認をする。船舶基地局は長崎から出航したと聞いたが、到着後、沿岸からケーブルを引く必要がある。被災直後から使えるものではない。
 陸上の中継局が停電で使えなくなり、道路も不通になった孤立地区では衛星電話を使うしかないと思う。KDDIが提供するイリジウム衛星を利用した衛星電話サービスを自治体が管理している場所に何台か配置しておくのはどうだろうか。
 イリジウム(低軌道衛星)は地上780kmに地球の周りに66機配置され、非静止衛星で様々な軌道で動いている。衛星電話のMobileタイプは25万円ほど、月額基本料金は約10,000円。通話料金は20秒で55円~63円。ガソリン式のポータブル自家発電機は5万円程度だ。震災で孤立の可能性のある地区は地勢学的に予測できるはずだ。自治体はそんな地区には予め配備しておいてはどうか。事が起きると衛星電話には長蛇の列ができるだろうが、電話はお互いに譲り合って使い、「生きてるよ」の一言は無用な混乱を防ぎ、関係者を安心させることができる。まちろん早急に被災状況を消防庁に伝えることもできる。



2023年12月11日月曜日

共通テスト批判

 来週は月曜から雨、雪。明日、明後日と雪が続くそうだ。月末はいよいよ冬期講習が始まる。受験生は、共通テスト前の最終調整だ。新しいことに手を出してはだめ。不安定なところを補強し目標の得点を取るよう全力投球だ。
 来月の13日14日に行われる共通テストは1979年に第1次学力試験を実施して以来、今年で45年目となった。共通テストが初めて実施されたのは令和3年だから、今年で4回目となる。特に英語に発音、文法問題が消え、単語の並べ替えもなくなったのには英語の教師ばかりでなく、これまでセンター試験や共通1次試験を受験した人がみんなが驚いた。復活はしないようだ。
 しかし、学校では文法の授業はしっかりある。単語テストもすべての学校で実施している、おなじみの「小テスト」だ。英作もかなりの学習時間を占める学習過程だ。単語を覚え、文法を学び長文を精読し、英作を書く。すべての学校がこれまで通り行っている英語教育だ。当然のように私立大学の入試問題には空所補充や単語の並べ替えは相変わらずある。
 共通テストに「発音問題」「文法問題」「並べ替え」を復活してほしい。リスニングの配点が多くなって、発音問題はいらなくなったというのは変な言い訳けだ。大学では英会話教育が盛んだ。抑揚が少ない日本語とは違って、英語は1語1語の抑揚が強い。英会話のために発音をおろそかにしてはいけないからこそ「発音問題」があったはずだ。文法問題も復活してほしい。日本語と英語では本質的に文法が異なる。文法をおろそかにすると読むことも書くこともままならない。並べ替えは英作の基本だ。単語の配列に注目して正しい英文を作れなければ、正確な会話を習得するのが遅れる。
 共通テストは「高大接続改革」(高校で学ぶ内容が大学教育の基本となるような関連づけ)を目指したものだったはずだ。小さな塾の塾長が偉そうな言い方だが、こと英語に関しては高大接続を妨害しているのが共通テストである。

2023年11月19日日曜日

虐待禁止条例案 撤回?

 10月15日の朝日新聞の朝刊に「埼玉県議団の虐待禁止条例改正案 撤回」という見出しがあった。虐待禁止条例を撤回する?これは人権尊重における後退だと思い、最後まで記事に目を通した。ネットでも各所で批判的な内容が掲載されていた。
 埼玉県の場合、自民党の県議会団が示した内容として、ざっと3点、短時間の留守番、子供だけの公園遊び、子供だけの登下校、車内に子供を残して買い物にいく、を「虐待とみなす」として追加改正しようとしたようだ。あくまで、可決しなかった案なので目くじらを立てることもなかろうが、体力と時間の無駄だっただろう。団の示した意見通りに条例が改正されると「子育てできない」という意見が殺到したそうだ。しかし、反発は当然予見されたはずなのに、団の方たちはなぜ?
 関東学院の牧瀬教授は「提案条例の実績が多いという成功体験」から「条例を出すことが目的化されていたのでは」と指摘しておられた。議会は身近な民意の反映を第一義とするものだろうと思う。考慮の無いたくさんの条例案の提出は「県民が」の主語が「おらが団が」に変わってしまう。
 ところで、子供の世話をする割合は、現状で女性の方が圧倒的に多い。ミキハウスの4700名のアンケート調査結果(2022 6月)では94%が女性だ。埼玉の団に女性議員はどのくらいいるのかと、調べてみると2023年6月の内閣府男女共同参画局の発表によると12.8%が女性だった。全国平均が11.8%なので平均以下ではないが、お隣の東京都の全国1位(30.9%)と比較するとずいぶん数字に溝がある。朝日新聞のリード文では「(この条例では)子育てができないと批判が渦巻いた」とある。議員団の女性はこの改正案に賛成したのか。反対しても黙殺されて議案の提出に至ったのか。男である私でもこの案が通るとちょっと困る。
 私の家では幼稚園に通う頃は短時間の留守番はよくさせた。きちんとルールは決めている。いい子にしていればお土産が待っている。公園には顔見知りの年配の方や同じ幼稚園や同じ学校の子どもの保護者がいて安心感はあった。車内に子どもを置いておくことはまずなかった。また、商業施設は子どもを遊ばせておけるスペースのある場所を選んで行った。登下校は保護者が同伴しにくい時間帯だ。条例化するなら、自宅まではむつかしくとも、県が有償ボランティアなど募集をすべきだと思う。子育ては親の教育と地域の連帯で進めていきたい。事細かな法律を決めて、なんとかなるものではない。

2023年10月17日火曜日

ゲーム条例から1年

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例  全20条と附則からなり、前書きには『インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用は、子どもの学力や体力の低下のみならずひきこもりや睡眠障害、視力障害などの身体的な 問題まで引き起こすことなどが指摘されており、世界保健機関において「ゲーム障害」が正式に疾病と認定されたように、今や、国内外で大きな 社会問題となっている。 —— (中略)—— ネット・ゲーム依存症対策の推進について、基本理念を定め、及び県、学校等、保護者等の責務等を明らかにするとともに、 ネット・ゲーム依存症対策に関する施策の基本となる事項を定める。』とある。
内容はかなり細かなところまで踏み込んでいて、18条には1日あたり60分、学校がお休みの時は90分を利用時間の限度とし、保護者はこれを守るよう努める義務を明記している。もちろん具体的な罰則はない。
 ところが、これに異議を唱えた高松出身の19歳の大学生と母親が権利の侵害(憲法13条幸福追求権の侵害)に当たるとして県に160万円の損害賠償を起こし、請求棄却の判決が2022年8月30日に判決が出てから1年が過ぎた。
 ゲームばかりでなくYou-tubeなどのネット依存症の影響は大きい。志向館の定期面談ではゲームに費やす時間を聞くと2~3時間はざらで、休みの日など1日中ネットを触る子どももいる。もちろん長時間のネット利用者は学習の遅れが目立つ。志向館グループのインターアクト生(中等部)の中にも学校に行く回数が少なく、依存が疑われる生徒かいる。全国でもネット依存と考えられるのは中学男子で10・6%、女子で14・3%、高校男子で13・2%、女子で18・9%となっていて、全国では少なくとも93万人と推計されている。
 これだけネットに夢中で学業をおろそかにする生徒が増えているのなら、自治体が基準を設けても当然である。条例を作った香川県ではネットから離れられないと「薬物依存と同様」という説明があった。その通りだと思う。社会人として通用する、修めるべき知識・教養の習得をネットに依存して怠るなら、ネットは「個人の自由」で片づけられない。これに自治体が条例で定めを置き、取り組むことは効果の有る無し、憲法云々などと言っている場合ではない。石川県では携帯電話の所持規定で適切な使い方を十分理解して、賢く利用する」となっており、ゲームに費やす利用時間までの細かな指導はしていない。
 青少年と直接接触し「なぜネットが危険なのか」のお話をする立場の大人、例えば、学校の先生、私たちのような民間教育の者、学習を大切に思う大人や保護者の方々はネットに時間を取られ学習時間が無くなっている子たちをなんとかしたいと思っています。
 きちんとした機関の有識者や法律に明言していただき、「WHOでも気をつけるように言うに言ってるよ」「政府は青少年インターネット環境整備法を作って、ネットの健全な利用を呼びかけてるんだよ」「市町村でもネット依存にならないように条例をつくってるんだ」。つまり社会全体が青少年のネットに警鐘を鳴らしていることをネットに依存しそうな青少年にお話しする根拠は多ければ多いほどいいと思ってる。

2023年9月20日水曜日

集中度を数値化?

 朝日新聞の第3面に「子供の気持ちデータ化・・・」の見出しが目に飛び込んできた。埼玉県の中学で実際に実施したそうだ。リストバンドの端末を生徒に取り付け、脈拍の測定をする。データーはバイタル
DX社が管理し、個人が特定されないように2年間管理されるそうだ。気持ちのデーター化を実施した校長先生は、自分のデーターを見て、「次はもっと集中してみようかな」と思ってくれるといいですね、と生徒におっしゃったそうだ。しかし、管理の行き過ぎを不安視する声が市民から届いたため、倫理運用規定に「倫理的な問題が浮上した場合速やかに対応する」という文言を追加したそうだ。自分の40年の経験から言えることは「教壇から見てればわかる」だ。
 話は変わるが、脳が意識的な活動をしていないとき、つまり、ぼんやりしているときに活性化する神経回路があるそうだ。デフォルトモード・ネットワークDMNという神経活動のパターンだ。医師の伊藤豊氏によると、脳の「内側前頭前野」「後帯状皮質」などで構成されているネットワークだそうだ。ぼ―っと散歩しているときや、コーヒーを飲んで一息ついているとき、とりとめもないことを考えながらシャワーを浴びているときなどに、DMNは活発化しています。反対に、何かに集中しているときには非活性状態なのです。
 DMNが正常に働いていれば、脳内の情報がスッキリと整理されます。また、蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、新しいアイデアが生まれるというメリットがあります。つまり、DMNが活性化すると、創造力が高まるのです。
 11世紀の中国の文学者・欧陽脩(おうようしゅう)は、文章を考えるのに最も適した場面として「三上」を挙げています。馬上・枕上・厠上(トイレの上)だそうです。
 そうなると、DMNは人間にとって無類の脳の活動です。授業中の集中力を悪く言う気はありませんが、機械を使ってまで集中していたかどうか測定するほど、集中力を絶賛して生徒に機械をつけるは、かなり一面的な価値観でしょう。興味がわく授業を教師が工夫するのがいいと思います。平凡な意見ですいません。

2023年8月13日日曜日

夏期合宿


夏期講習が始まりました。今は合宿所にいます。講師も含めて100名を引率しての合宿です。今年で28回目となりました。思えば、志向館の初期の合宿は館内合宿でした。2泊3日で、寝るところは教室でした。寝る前は掃除です。掃除機かけて雑巾で拭いて、貸し布団屋さんから布団を借りました。参加者は十数名だったと思います。塾舎の隣が自宅なので、自宅で作った料理を運び込みます。授業は2泊3日で90分10コマだったと思います。
 一つ所で寝食を共にするのは、その後の学習面で大きなプラスになります。日常の当たり前の食事や入浴、就寝といったことも、合宿所では日常生活とは違った特別な経験になります。例えば食事。私たちが利用した施設はビュッフェ形式で、同じ膳を食べるのではありませんが、それでもコロナ禍ほどの制限もなく、「〇〇どうやった?」「ちょっと酸っぱい感じ」「今から追加もってこよっと」「ご飯大盛」「この倍は行ける」のような会話が飛び交います。入浴も合宿ならではの制限があり、「今日は2時間程度の入浴時間で300名が使います。志向館の女子は15分で上がってください」と指示が出ます。ワーワー、ドタバタ、キャーキャーで入浴を済ます日もあります。共同生活の自覚があるので不満もなく「おもしろかった」が感想です。就寝にしても、赤の他人と寝ることは稀なことです。
 合宿が終わって、通常の授業に戻ってもしばらくは話題が続きます。合宿後の1週は参加者に会うと、「体調は」と聞きます。さらに「週末の模試で効果でるといいな」と続けます。その後も、「あんときの食事」「あんときの風呂」といった話題は続きます。学習目標とは、勉強して、理解できて、模試で成績が上がるというものですが、希薄な人間関係より寝食を共にした教師と生徒の関係は一歩踏み込んだ対話の発展につながります。共有した経験は「本音をいう」「腹を割って」という会話がしやすくなります。学習自体は無味乾燥。そこに寝食を共にした経験が加わることで、教師と生徒の関係に幅や深みが加わるといってもいいでしょう。

2023年7月23日日曜日

CO2を出さない発電

テレビCMで「CO2を出さない火で火力発電をする」という試みを知った。火は木を燃やしたり、石油、石炭などを燃やして燃焼を持続させるのが当たり前だ。木は燃焼するとC(炭素)+O、ちゃんと書くとC+O2=CO2である。灯油の分子はC11H24など、石炭はシリカという物質SiO2が主成分だそうだ。O2を加える(燃焼)と、Cが含まれているのでCO2が発生する。
 ところが、燃焼してもCO2が出ない物質で火を作れるそうだ。日本は総発電数の70%以上を化石燃料に頼っているのが現状。先進国の脱酸素化のトレンドからすると、肩身の狭い日本にとってはありがたい話である。
 JERAの奥田久栄 副社長のお話では、カギを握るのは「アンモニア(NH3)」と「水素(H2)」で、化学式からもわかるように、この2つにはCが含まれていない。つまり、燃やして酸素と結びついても、CO2が出ないのだ。特にアンモニアに注目しているそうだ。新しい燃料を扱う際は、それに適した新しい発電設備をつくる必要があるのだが、アンモニアの混焼(混ぜて燃焼)は、既存の発電設備を少し改造するだけで実施できるそうだ。石炭火力は80メートルもあるボイラーという炉で燃やされ、水を蒸気に変えてタービンを回すのだが、簡単に言うと、CO2を出さない火力では、石炭の代わりにアンモニアを燃やすのだそうだ。それも今使っているボイラーをそのまま使えるので、設備投資がかなり節約できる。
 気になるのはアンモニアの調達だが、地球に眠っている土を掘り返さなくて済みそうだ。電気は使うが、工場で作ることができ、技術力で勝負できるのは日本にとってありがたく、資源を持つ一部の国に依存する割合が減り、資源をめぐって政治的な対立が起こりにくいと予想される。いずれ、レアーメタルなんぞなくても、いろいろな製品が作れるような時代がきっと来るように思う。技術立国に生まれた高校生諸君よ!勉強しましょう。

2023年6月22日木曜日

整形手術

 


6月20日の朝日新聞に「二重手術 高校合格のご褒美」という見出しで、袖書きに「10代の美容医療増加 揺れる親」とあった。高校に合格した暁に、ご褒美で二重を作る埋没法(瞼を糸で留める方法)手術の約束してもらった女子の話が冒頭にあった。手術は自由診療で50万。でも、モニター価格で5万円と言われ、親も納得してくれたとのこと。

1週間で手術後の腫れも引き、人と目を合わせることが嫌ではなくなって、「気持ちが明るくなった(本人感想)」そうだ。朝日新聞の紙面には湘南美容クリニックの広告が(SBCマーケティング提供)掲載されていた。キャッチフレーズは「たった3年の高校生活。一秒でも長くカワイイ私で過ごしたい」だった。完全なルッキズムである。10代の女子で二重にする手術を受けた人は、2019年の1万6千人から2022年では26千人に増加したそうだ。インターネットで検索してみると「手術時間15分、両眼4,800円」という見出で、TCBというwebサイトに、いくつものクリニックの名前が載っていた。金沢では駅前にあるようだ。ここまで気軽に、簡単に、低コストとなれば、「学校帰りに、いただいたお年玉持って・・・」のキャッチフレーズも現実にあり得るかもしれないと思った。                                                                      

社会学的にみると、ルッキズムは「社会(男性社会)による押し付け」としてとらえることもできる。ここでは美容整形は「社会に流布する女性美の模範に合わせる」(バルサモ)になるそうだ。

大阪樟蔭の松下先生の大学生、大学院生(87名)のアンケート調査によると反対論者の大半は「親からもらったものに傷をつけることの抵抗感」「人をだますことになる」など道徳的な観点と「副作用、後遺症の心配」医学的観点の2つに絞られる。道徳心の抵抗にしても、副作用や後遺症の恐怖にしてもどちらも払拭しきれぬものがある。まして、副作用は低い確率でも起こっている事実は否定しがたい。

しかし、とりあえずの結論としては、整形は個人の判断というしかない。心的満足度はその人にしかわからない。「きれいになった」の一言が欲しいのは強欲でもなんでもなく、誰しもが持つ願望といってもいい。したければすればいいと思う。まして、それで気持ちが明るくなって人生に前向きになれればいいと思う。高校生は確かに目にコンプレックスがある子が多く、二重瞼であればどれほど幸せかというのは聞いたことが何度もある。「人ときちんと向き合る」ことは学業にもいい影響がでる。

これからも、整形は増えてくると思う。特に目に関するプチ整形の件数はうなぎのぼりだと思う。でも、整形が一般化すると、こんな会話があるかも。男子:「君かわいいね。整形?」整形経験の女子:「ちがうよ。」このような会話が交わされると、「虚偽」が成立し、法定離婚事由に該当することがあります。整形は自由だが、人を巻き込んだ一生モノの決断では正直が何よりかと。