2023年1月14日土曜日

共通テスト前夜

 共通テストが始まった。金沢は13℃。自分が記憶している限り、最も気温が高い日ではなかろうか。
 現役高校生の塾部門にはありませんが、予備校は激励会があります。寺町校と城北校、同時開催です。真っ先に「館長のお話し」と、ご指名をいただきます。
 始めに応援グッズからです。真ん中の銀の小粒の包装が見えるのはチョコです。「志向館から愛をこめて」と説明。ティッシュ2種類は鼻セレブと濡れティッシュ。かっぱえびせんでは「勝、パーっと、AB(AB判定が欲しい)戦」などど、和ませようとします。(あまり笑ってくれない) ホッカイロで「手を温めて」、最後に名刺サイズの先生方の寄せ書きを「お守り」として渡します。ちなみに、私の寄せ書きの言葉は「人事を尽くして天命を待つ」。ここからやっと私の話。以下にその要旨を掲載します。

 フランスの哲学者でジャン=フランソワ=リオタール(1998没)は「大きな物語」「小さな物語」という考えを提唱しました。大きな物語は「科学の進歩」「ナショナリズム」「民主主義」など、人が理想を追求する潮流のようなものですが、多様化している現代では、大きな流れの中で見過ごされがちな個人の「小さな物語」こそ大切と主張した人です。
 明日、明後日の共通テストではみんな一人一人の「小さな物語」の主役。試験前の気分は?「ドキドキ」「怖い」「緊張」、それは「小さな物語」の始まり。逆説的ですが、実はそんな気持ちの「高ぶり」はブレーキではないのです。ストレスを乗り切ろうとうする防衛本能です。
 誰でも疲れると眠くなります。怪我をすると痛みがそれを知らせます。体内に入った菌をやっつけるため熱が出ます。自然の反応は止められません。実はその「高ぶり」も皆をベストコンディションにする本能です。「高ぶり」はテンションを上げ脳に血流を流し、いつもより脳を働かせようとしている生理なのです。抑えようと逆らうと、かえってブレーキです。周りにたくさんいても他人は関係ありません。ステージに立つ小さな物語の主人公の自分自身の「高ぶり」を肯定的に受け入れて、よし、これでいい!頭はフル回転という気持ちで試験に臨んでください。

(注) 「小さな物語」はリオタールの言葉を借りただけで、激励会で使った「小さな物語」は正しくは「個人的な物語」です。リオタールの「小さな物語」は時代の主流となる植民者に代表される思想の陰で、それに抵抗した人々の存在があったことを見過ごしてはいけないとの主張です。