2016年5月11日水曜日

五輪エンブレム

 五輪エンブレムがようやっと決まった。地味なので驚いた。これまで、各国、赤色が入る華やかなものが主流だったように思えるが、今回の東京では市松模様ときた。市松模様は江戸時代の歌舞伎役者の佐野川市松が袴に白と紺を交互にチェス盤風に配置した模様を着用、大流行したところに起源があるそうだ。また、写楽の描いた「祇園町の白人おなよ」が着用している羽織の襟のあたりににも確かに市松模様がある。鮮烈な色を配色をモチーフより、地味ではあるが馴染みある作品で、その由来は古い。デザインを外国の方に、説明するときも日本の伝統的なデザインを薀蓄するにいいネタであろう。また、チェス競技は15紀あたりに確立されたようで、テンプル騎士団にも関連が深く、現在のチェッカー柄盤を使用したのもこの頃のようだ。とすると、江戸期の古典的なモチーフといっても、国際感覚と一致するところも大きく、興味深い。国際的にもなじみのある万人に受け入れられるデザインということだろう。

 さて、ここはベイシックサイエンスの出番である。志向館の予備校の授業で、10年は続いている「現代社会を科学する」私の毎週月曜の演目である。問題となった佐野氏のパクリ疑惑を解説し、当時審査をされた方たちの肩書きからすると、佐野氏が圧倒的に有利だった状況を説明し、市松模様の由来も話し、最終選考委員になってもらった。


今年の志向館予備校はほぼ定員どおりで、40名ほど。単科生でその場にいなかった館生と投票しなかった生徒を除き、33名の投票結果がでた。若い方たちなので、最終選考に残った4作品からは、色あでやかなものに投票が集まると思ったが、ダントツで市松だった。33名中16名が市松を選んだ。その他、「つなぐ輪」が6名、「超える人」が3名、「朝顔」が8名だった。若いやつらもなかなかいいセンスだと思った。有色彩が多い中、渋い伝統を選んだのにはうれしい気がした。

 佐野氏は今どうしておられるのだろう。たしか、多摩美の教授をしておられたはずだ。
今回のような職業倫理を問われる疑惑にまきこまれるとずいぶんやりづらいだろう。生徒は直接何も言わなくても、教壇に立ち、我が2個の目で、もの言わぬ何十もの、自分の心が感じる批判的な目を受け入れるのはつらい。「人の振り見てわが振り…」先生は教えるだけではない。人物を売りにしているところが大きい。しっかり身を修めていかねければと痛感する。