2024年2月25日日曜日

政治不信

 自民党の、特に安部派の方たちが、「裏金」を作っていた。法学部卒の血が騒いで、法律を調べた。政治金収支報告書に記載せず迂回献金即ち「裏金」が確定すれば、政治資金規正法違反だけでなく、税務申告を懈怠(けたい=なまける)した場合には「所得隠し」となり脱税犯罪(所得税法第238条違反)となる。
 政治資金規正法に定める罪を犯し、禁錮刑に処せられた者は裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間とその後の5年間公民権の停止 ②罰金刑に処せられた者は裁判が確定した日から5年間の公民権の停止③ これらの刑の執行猶予の言い渡しを受けた者も公民権を停止。公民権とは国政に参加する権利のことだ。たとえ執行猶予付きの判決でも政治家にとっては致命的だ。
 初めにこの問題を暴露したのは共産党の「しんぶん赤旗」で昨年の日曜版。11月6日のことだ。この時の見出しは紙面2ページにわたり、「パー券収入、脱法的隠ぺい2500万円分不記載」と報じた。
 その後、東京地検に告発をしたのが神戸学院大学 上脇教授。ブルーグレーのバンダナヘッドが可愛さと凄みを漂わせる。「政治とカネを問う」の題名でYoutubeに1月19日にアップロードしておられる。1ヵ月前に3.2万回の視聴を記録した。
 さらに、キックバックのキャッチ(フレーズ)で、政治資金規正法違反の疑いを派手にマスコミ各社も報道した。打ち上げ花火の連打だ。
 不正を報道する時、カタカナや日常生活で使う言葉をあえて使い、権力者を「ただの人」扱いをして人格を失墜させる。政治の世界は一般人からすると身近ではない。すごい世界だ。そこに、民間の会社で日常的に行われているキックバックという言葉を使うことで、「商売」イメージで表現し、公人なのに「利益に走った」という印象を視聴者に与える。
 もちろんキックバックやリベートは違法ではない。実際のビジネスシーンでは行われている。 「うちの商品を今期中に100個売ってくれたら、売り上げの10%を返礼にお受け取りください」といったように、基本的に販促目的で行われる。小売りの側はキックバックを目標に一生懸命売る。会社に黙って個人が受け取ると背任罪などになる。
 高校生諸君はどうおもっているのだろう。「社会性の育成を重視し、自由と規律のバランスの回復を図ることが重要である。」(文科省の重要提言:国民会議報告H12.12)自由は一定の規律のなかで確保されるべきである。悪いことをしたら、罪を認めて誠実に「謝罪」することは人として当然だ。
 2022年4月26日に高校生を対象にラインユーザーを対象にスマホweb調査が実施された。有効回収数は998人だった。「もし政治家になれるとしたらなってみたいと思うか」、率直な意見を聞いたところ、「まったくなってみたいと思わない」51%で、「どちらかといえば、なってみたいと思わない」28%を合わせた、高校生が「政治家になってみたいと思わない」は8割弱(79%)だとわかった。一方で、「ぜひなってみたいと思う」6%だった。人気の仕事ではないようだ。志向館で一部の生徒に聞いてみたことがある。誰もいなかった。
 人気の仕事は「国家公務員・地方公務員」「教師・教員・大学教授」「システムエンジニア・プログラマー」がトップ3だ。「知的」で「安定」しているのがイメージだと思う。私も大学教授になりたかったので、気持ちはわかる。
 政治の世界に優秀な人格者が入ってほしいと切望している。この度の騒動で最大の罪は政治的権威や信頼感の失墜を招いたことだ。この度ばかりでなく、過去を振り返っても、政治の世界には数多くの不祥事が蔓延している。政治が狂った方向に走れば、そんな世界に入ろうと志す優秀な人材はいなくなる

2024年1月29日月曜日

能登半島地震

 大地震がきた。能登半島地震だ。私の住む金沢市は一部の地区を除いては多くの家屋が倒壊したり、大火が襲ってきたりしなかった。しかし、金沢でも震度5強。かなりの揺れが30秒ほど続いて、だんだん弱まった。体に感じる揺れは1分ほどだったと思う。1月1日の16時10分は正月特訓の最中で、寺町校と城北校で100名は校舎にいた。受講生のスマホは一斉にアラームが鳴り響き、みんな机の下にさっと入った。幸い志向館の建物の被害はなかった。
 金沢に住む人は能登に親族を持つ人が多い。私が授業を担当する約40名の生徒の中で、能登に親族がいたのは13名にも達した。こんなことは生徒に聞いたことがなかったので本当に驚いた。能登は農業者や漁業者の多い中、仕事を求めて金沢に出てきて、定住した人が多いのは、人々の再配置を改めて自覚する機会となった。
 9年前に珠洲に親戚ができた。私の次女が珠洲の大谷地区出身の方と結婚をしたからだ。娘の結婚相手は金沢で就職したといっても珠洲で一人暮らしをしている先方のお父様から、長男を奪った感じがして申しわけなく思った。
 震災直後、珠洲のお父様とは約10日ほど連絡が取れなかったが災害ボランティアに行った人から無事だと聞いて安堵した。スマホが通じず、連絡がとれなかった間、自宅が倒壊して生き埋めになったと思い、長男は危険を承知で自家用車で大谷地区に行く計画をしていた。
 災害が起こると、皆、被災地の関係者の安否確認をする。船舶基地局は長崎から出航したと聞いたが、到着後、沿岸からケーブルを引く必要がある。被災直後から使えるものではない。
 陸上の中継局が停電で使えなくなり、道路も不通になった孤立地区では衛星電話を使うしかないと思う。KDDIが提供するイリジウム衛星を利用した衛星電話サービスを自治体が管理している場所に何台か配置しておくのはどうだろうか。
 イリジウム(低軌道衛星)は地上780kmに地球の周りに66機配置され、非静止衛星で様々な軌道で動いている。衛星電話のMobileタイプは25万円ほど、月額基本料金は約10,000円。通話料金は20秒で55円~63円。ガソリン式のポータブル自家発電機は5万円程度だ。震災で孤立の可能性のある地区は地勢学的に予測できるはずだ。自治体はそんな地区には予め配備しておいてはどうか。事が起きると衛星電話には長蛇の列ができるだろうが、電話はお互いに譲り合って使い、「生きてるよ」の一言は無用な混乱を防ぎ、関係者を安心させることができる。まちろん早急に被災状況を消防庁に伝えることもできる。



2023年12月11日月曜日

共通テスト批判

 来週は月曜から雨、雪。明日、明後日と雪が続くそうだ。月末はいよいよ冬期講習が始まる。受験生は、共通テスト前の最終調整だ。新しいことに手を出してはだめ。不安定なところを補強し目標の得点を取るよう全力投球だ。
 来月の13日14日に行われる共通テストは1979年に第1次学力試験を実施して以来、今年で45年目となった。共通テストが初めて実施されたのは令和3年だから、今年で4回目となる。特に英語に発音、文法問題が消え、単語の並べ替えもなくなったのには英語の教師ばかりでなく、これまでセンター試験や共通1次試験を受験した人がみんなが驚いた。復活はしないようだ。
 しかし、学校では文法の授業はしっかりある。単語テストもすべての学校で実施している、おなじみの「小テスト」だ。英作もかなりの学習時間を占める学習過程だ。単語を覚え、文法を学び長文を精読し、英作を書く。すべての学校がこれまで通り行っている英語教育だ。当然のように私立大学の入試問題には空所補充や単語の並べ替えは相変わらずある。
 共通テストに「発音問題」「文法問題」「並べ替え」を復活してほしい。リスニングの配点が多くなって、発音問題はいらなくなったというのは変な言い訳けだ。大学では英会話教育が盛んだ。抑揚が少ない日本語とは違って、英語は1語1語の抑揚が強い。英会話のために発音をおろそかにしてはいけないからこそ「発音問題」があったはずだ。文法問題も復活してほしい。日本語と英語では本質的に文法が異なる。文法をおろそかにすると読むことも書くこともままならない。並べ替えは英作の基本だ。単語の配列に注目して正しい英文を作れなければ、正確な会話を習得するのが遅れる。
 共通テストは「高大接続改革」(高校で学ぶ内容が大学教育の基本となるような関連づけ)を目指したものだったはずだ。小さな塾の塾長が偉そうな言い方だが、こと英語に関しては高大接続を妨害しているのが共通テストである。

2023年11月19日日曜日

虐待禁止条例案 撤回?

 10月15日の朝日新聞の朝刊に「埼玉県議団の虐待禁止条例改正案 撤回」という見出しがあった。虐待禁止条例を撤回する?これは人権尊重における後退だと思い、最後まで記事に目を通した。ネットでも各所で批判的な内容が掲載されていた。
 埼玉県の場合、自民党の県議会団が示した内容として、ざっと3点、短時間の留守番、子供だけの公園遊び、子供だけの登下校、車内に子供を残して買い物にいく、を「虐待とみなす」として追加改正しようとしたようだ。あくまで、可決しなかった案なので目くじらを立てることもなかろうが、体力と時間の無駄だっただろう。団の示した意見通りに条例が改正されると「子育てできない」という意見が殺到したそうだ。しかし、反発は当然予見されたはずなのに、団の方たちはなぜ?
 関東学院の牧瀬教授は「提案条例の実績が多いという成功体験」から「条例を出すことが目的化されていたのでは」と指摘しておられた。議会は身近な民意の反映を第一義とするものだろうと思う。考慮の無いたくさんの条例案の提出は「県民が」の主語が「おらが団が」に変わってしまう。
 ところで、子供の世話をする割合は、現状で女性の方が圧倒的に多い。ミキハウスの4700名のアンケート調査結果(2022 6月)では94%が女性だ。埼玉の団に女性議員はどのくらいいるのかと、調べてみると2023年6月の内閣府男女共同参画局の発表によると12.8%が女性だった。全国平均が11.8%なので平均以下ではないが、お隣の東京都の全国1位(30.9%)と比較するとずいぶん数字に溝がある。朝日新聞のリード文では「(この条例では)子育てができないと批判が渦巻いた」とある。議員団の女性はこの改正案に賛成したのか。反対しても黙殺されて議案の提出に至ったのか。男である私でもこの案が通るとちょっと困る。
 私の家では幼稚園に通う頃は短時間の留守番はよくさせた。きちんとルールは決めている。いい子にしていればお土産が待っている。公園には顔見知りの年配の方や同じ幼稚園や同じ学校の子どもの保護者がいて安心感はあった。車内に子どもを置いておくことはまずなかった。また、商業施設は子どもを遊ばせておけるスペースのある場所を選んで行った。登下校は保護者が同伴しにくい時間帯だ。条例化するなら、自宅まではむつかしくとも、県が有償ボランティアなど募集をすべきだと思う。子育ては親の教育と地域の連帯で進めていきたい。事細かな法律を決めて、なんとかなるものではない。

2023年10月17日火曜日

ゲーム条例から1年

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例  全20条と附則からなり、前書きには『インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用は、子どもの学力や体力の低下のみならずひきこもりや睡眠障害、視力障害などの身体的な 問題まで引き起こすことなどが指摘されており、世界保健機関において「ゲーム障害」が正式に疾病と認定されたように、今や、国内外で大きな 社会問題となっている。 —— (中略)—— ネット・ゲーム依存症対策の推進について、基本理念を定め、及び県、学校等、保護者等の責務等を明らかにするとともに、 ネット・ゲーム依存症対策に関する施策の基本となる事項を定める。』とある。
内容はかなり細かなところまで踏み込んでいて、18条には1日あたり60分、学校がお休みの時は90分を利用時間の限度とし、保護者はこれを守るよう努める義務を明記している。もちろん具体的な罰則はない。
 ところが、これに異議を唱えた高松出身の19歳の大学生と母親が権利の侵害(憲法13条幸福追求権の侵害)に当たるとして県に160万円の損害賠償を起こし、請求棄却の判決が2022年8月30日に判決が出てから1年が過ぎた。
 ゲームばかりでなくYou-tubeなどのネット依存症の影響は大きい。志向館の定期面談ではゲームに費やす時間を聞くと2~3時間はざらで、休みの日など1日中ネットを触る子どももいる。もちろん長時間のネット利用者は学習の遅れが目立つ。志向館グループのインターアクト生(中等部)の中にも学校に行く回数が少なく、依存が疑われる生徒かいる。全国でもネット依存と考えられるのは中学男子で10・6%、女子で14・3%、高校男子で13・2%、女子で18・9%となっていて、全国では少なくとも93万人と推計されている。
 これだけネットに夢中で学業をおろそかにする生徒が増えているのなら、自治体が基準を設けても当然である。条例を作った香川県ではネットから離れられないと「薬物依存と同様」という説明があった。その通りだと思う。社会人として通用する、修めるべき知識・教養の習得をネットに依存して怠るなら、ネットは「個人の自由」で片づけられない。これに自治体が条例で定めを置き、取り組むことは効果の有る無し、憲法云々などと言っている場合ではない。石川県では携帯電話の所持規定で適切な使い方を十分理解して、賢く利用する」となっており、ゲームに費やす利用時間までの細かな指導はしていない。
 青少年と直接接触し「なぜネットが危険なのか」のお話をする立場の大人、例えば、学校の先生、私たちのような民間教育の者、学習を大切に思う大人や保護者の方々はネットに時間を取られ学習時間が無くなっている子たちをなんとかしたいと思っています。
 きちんとした機関の有識者や法律に明言していただき、「WHOでも気をつけるように言うに言ってるよ」「政府は青少年インターネット環境整備法を作って、ネットの健全な利用を呼びかけてるんだよ」「市町村でもネット依存にならないように条例をつくってるんだ」。つまり社会全体が青少年のネットに警鐘を鳴らしていることをネットに依存しそうな青少年にお話しする根拠は多ければ多いほどいいと思ってる。

2023年9月20日水曜日

集中度を数値化?

 朝日新聞の第3面に「子供の気持ちデータ化・・・」の見出しが目に飛び込んできた。埼玉県の中学で実際に実施したそうだ。リストバンドの端末を生徒に取り付け、脈拍の測定をする。データーはバイタル
DX社が管理し、個人が特定されないように2年間管理されるそうだ。気持ちのデーター化を実施した校長先生は、自分のデーターを見て、「次はもっと集中してみようかな」と思ってくれるといいですね、と生徒におっしゃったそうだ。しかし、管理の行き過ぎを不安視する声が市民から届いたため、倫理運用規定に「倫理的な問題が浮上した場合速やかに対応する」という文言を追加したそうだ。自分の40年の経験から言えることは「教壇から見てればわかる」だ。
 話は変わるが、脳が意識的な活動をしていないとき、つまり、ぼんやりしているときに活性化する神経回路があるそうだ。デフォルトモード・ネットワークDMNという神経活動のパターンだ。医師の伊藤豊氏によると、脳の「内側前頭前野」「後帯状皮質」などで構成されているネットワークだそうだ。ぼ―っと散歩しているときや、コーヒーを飲んで一息ついているとき、とりとめもないことを考えながらシャワーを浴びているときなどに、DMNは活発化しています。反対に、何かに集中しているときには非活性状態なのです。
 DMNが正常に働いていれば、脳内の情報がスッキリと整理されます。また、蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、新しいアイデアが生まれるというメリットがあります。つまり、DMNが活性化すると、創造力が高まるのです。
 11世紀の中国の文学者・欧陽脩(おうようしゅう)は、文章を考えるのに最も適した場面として「三上」を挙げています。馬上・枕上・厠上(トイレの上)だそうです。
 そうなると、DMNは人間にとって無類の脳の活動です。授業中の集中力を悪く言う気はありませんが、機械を使ってまで集中していたかどうか測定するほど、集中力を絶賛して生徒に機械をつけるは、かなり一面的な価値観でしょう。興味がわく授業を教師が工夫するのがいいと思います。平凡な意見ですいません。

2023年8月13日日曜日

夏期合宿


夏期講習が始まりました。今は合宿所にいます。講師も含めて100名を引率しての合宿です。今年で28回目となりました。思えば、志向館の初期の合宿は館内合宿でした。2泊3日で、寝るところは教室でした。寝る前は掃除です。掃除機かけて雑巾で拭いて、貸し布団屋さんから布団を借りました。参加者は十数名だったと思います。塾舎の隣が自宅なので、自宅で作った料理を運び込みます。授業は2泊3日で90分10コマだったと思います。
 一つ所で寝食を共にするのは、その後の学習面で大きなプラスになります。日常の当たり前の食事や入浴、就寝といったことも、合宿所では日常生活とは違った特別な経験になります。例えば食事。私たちが利用した施設はビュッフェ形式で、同じ膳を食べるのではありませんが、それでもコロナ禍ほどの制限もなく、「〇〇どうやった?」「ちょっと酸っぱい感じ」「今から追加もってこよっと」「ご飯大盛」「この倍は行ける」のような会話が飛び交います。入浴も合宿ならではの制限があり、「今日は2時間程度の入浴時間で300名が使います。志向館の女子は15分で上がってください」と指示が出ます。ワーワー、ドタバタ、キャーキャーで入浴を済ます日もあります。共同生活の自覚があるので不満もなく「おもしろかった」が感想です。就寝にしても、赤の他人と寝ることは稀なことです。
 合宿が終わって、通常の授業に戻ってもしばらくは話題が続きます。合宿後の1週は参加者に会うと、「体調は」と聞きます。さらに「週末の模試で効果でるといいな」と続けます。その後も、「あんときの食事」「あんときの風呂」といった話題は続きます。学習目標とは、勉強して、理解できて、模試で成績が上がるというものですが、希薄な人間関係より寝食を共にした教師と生徒の関係は一歩踏み込んだ対話の発展につながります。共有した経験は「本音をいう」「腹を割って」という会話がしやすくなります。学習自体は無味乾燥。そこに寝食を共にした経験が加わることで、教師と生徒の関係に幅や深みが加わるといってもいいでしょう。

2023年7月23日日曜日

CO2を出さない発電

テレビCMで「CO2を出さない火で火力発電をする」という試みを知った。火は木を燃やしたり、石油、石炭などを燃やして燃焼を持続させるのが当たり前だ。木は燃焼するとC(炭素)+O、ちゃんと書くとC+O2=CO2である。灯油の分子はC11H24など、石炭はシリカという物質SiO2が主成分だそうだ。O2を加える(燃焼)と、Cが含まれているのでCO2が発生する。
 ところが、燃焼してもCO2が出ない物質で火を作れるそうだ。日本は総発電数の70%以上を化石燃料に頼っているのが現状。先進国の脱酸素化のトレンドからすると、肩身の狭い日本にとってはありがたい話である。
 JERAの奥田久栄 副社長のお話では、カギを握るのは「アンモニア(NH3)」と「水素(H2)」で、化学式からもわかるように、この2つにはCが含まれていない。つまり、燃やして酸素と結びついても、CO2が出ないのだ。特にアンモニアに注目しているそうだ。新しい燃料を扱う際は、それに適した新しい発電設備をつくる必要があるのだが、アンモニアの混焼(混ぜて燃焼)は、既存の発電設備を少し改造するだけで実施できるそうだ。石炭火力は80メートルもあるボイラーという炉で燃やされ、水を蒸気に変えてタービンを回すのだが、簡単に言うと、CO2を出さない火力では、石炭の代わりにアンモニアを燃やすのだそうだ。それも今使っているボイラーをそのまま使えるので、設備投資がかなり節約できる。
 気になるのはアンモニアの調達だが、地球に眠っている土を掘り返さなくて済みそうだ。電気は使うが、工場で作ることができ、技術力で勝負できるのは日本にとってありがたく、資源を持つ一部の国に依存する割合が減り、資源をめぐって政治的な対立が起こりにくいと予想される。いずれ、レアーメタルなんぞなくても、いろいろな製品が作れるような時代がきっと来るように思う。技術立国に生まれた高校生諸君よ!勉強しましょう。

2023年6月22日木曜日

整形手術

 


6月20日の朝日新聞に「二重手術 高校合格のご褒美」という見出しで、袖書きに「10代の美容医療増加 揺れる親」とあった。高校に合格した暁に、ご褒美で二重を作る埋没法(瞼を糸で留める方法)手術の約束してもらった女子の話が冒頭にあった。手術は自由診療で50万。でも、モニター価格で5万円と言われ、親も納得してくれたとのこと。

1週間で手術後の腫れも引き、人と目を合わせることが嫌ではなくなって、「気持ちが明るくなった(本人感想)」そうだ。朝日新聞の紙面には湘南美容クリニックの広告が(SBCマーケティング提供)掲載されていた。キャッチフレーズは「たった3年の高校生活。一秒でも長くカワイイ私で過ごしたい」だった。完全なルッキズムである。10代の女子で二重にする手術を受けた人は、2019年の1万6千人から2022年では26千人に増加したそうだ。インターネットで検索してみると「手術時間15分、両眼4,800円」という見出で、TCBというwebサイトに、いくつものクリニックの名前が載っていた。金沢では駅前にあるようだ。ここまで気軽に、簡単に、低コストとなれば、「学校帰りに、いただいたお年玉持って・・・」のキャッチフレーズも現実にあり得るかもしれないと思った。                                                                      

社会学的にみると、ルッキズムは「社会(男性社会)による押し付け」としてとらえることもできる。ここでは美容整形は「社会に流布する女性美の模範に合わせる」(バルサモ)になるそうだ。

大阪樟蔭の松下先生の大学生、大学院生(87名)のアンケート調査によると反対論者の大半は「親からもらったものに傷をつけることの抵抗感」「人をだますことになる」など道徳的な観点と「副作用、後遺症の心配」医学的観点の2つに絞られる。道徳心の抵抗にしても、副作用や後遺症の恐怖にしてもどちらも払拭しきれぬものがある。まして、副作用は低い確率でも起こっている事実は否定しがたい。

しかし、とりあえずの結論としては、整形は個人の判断というしかない。心的満足度はその人にしかわからない。「きれいになった」の一言が欲しいのは強欲でもなんでもなく、誰しもが持つ願望といってもいい。したければすればいいと思う。まして、それで気持ちが明るくなって人生に前向きになれればいいと思う。高校生は確かに目にコンプレックスがある子が多く、二重瞼であればどれほど幸せかというのは聞いたことが何度もある。「人ときちんと向き合る」ことは学業にもいい影響がでる。

これからも、整形は増えてくると思う。特に目に関するプチ整形の件数はうなぎのぼりだと思う。でも、整形が一般化すると、こんな会話があるかも。男子:「君かわいいね。整形?」整形経験の女子:「ちがうよ。」このような会話が交わされると、「虚偽」が成立し、法定離婚事由に該当することがあります。整形は自由だが、人を巻き込んだ一生モノの決断では正直が何よりかと。

 

 

2023年5月25日木曜日

株高

価は5月22日の上昇で3万1千円台に乗った。理由はいくつかあるが、海外の株式投資家が日本株を買っているのが直接の要因である。有名なアメリカの投資家ウォレン・バフェットが日本株への投資を明言したからだ。バフェット氏は日銀の植田新総裁が大規金融緩和を継続したことやアメリカの銀行の破綻問題を受け、今は日本の企業が強いと踏んだのだろう。さらに、拍車をかけているのが、日本の企業が自社株を購入していることだ。自分で自分の株を買えば当然株価は上昇し注目され、他の投資家の一層の株式購入を促すことになる。また、円安が続き日本株の上昇が続く可能性は高い。円安は海外資本が日本株を買い安くしている要因でもある。しかし、日銀が市場介入を行い、ドル売り円買いを行う向きが見られない。介入の脅し文句すらない。理由は簡単だ、企業は株が上昇することで、資産の含み益が増大し、銀行などから資金調達がしやすくなる。延々と続く低金利策と株価の上昇は日本の企業にとって追い風である。好景気の呼び水である。もちろんここで、給与を上げないと、国民全体に低金利と株安の恩恵は届かない。しかし、企業は内部留保に懸命だと聞く。
 最近「株をやらないか」と証券関連の方は勧めてくる。本来、企業は業績を上げ、業績に見合った株価がつくのが正常だが、株に殺到して上がった利益を得ることだけを考えるいわゆる相場師的発想には必ず下落がある。特に素人がこぞって市場に参入してくると。どこが最高値かわからなくなって、高値で買い、いきなり下落し、損をする人が出てくる。最後に泣くのはたいがい素人である。
 高校生にどんな人になりたいと聞くと、はばかることなく「お金持ち」と答える生徒もいる。いい答えだ。今度、株の話をしよう。いいところも悪いところも。そして必ず勉強しないと株では勝てないと付け足そう。

2023年4月30日日曜日

AIと向き合う

 

海外掲示板「Reddit(アメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイトで自由に画像などの投稿ができる)1923年、H.T.ウェブスターという漫画家が、米「ニューヨーク・ワールド」紙に、2023年を予測した1コマ漫画の掲載があったそうです。この漫画は、1世紀後の現在、AIによる画像合成が進み、実際に作品を自動生成できるようになることを予期させるものが示されていて話題を呼んでいます。
こんなことができたらと創造したことは、未来に類似したモノが必ず実現する。人が月に住むなんてもうすぐだろう。私は小学生のころ「未来の私たちの絵」というテーマで図画工作の時間に月まで届くエスカレーターをクレヨン画で描いた。当時デパートにエスカレーターが設置され、珍しかったからだ。じっとしていて月まで階段が運んでくれる未来を創造した。出先で電話ができると便利だと感じ、1980年代は数キログラムもある携帯電話が登場し、お金持ちが車の中から車載電話をしていた。それから40年。カメラ機能を持つPCに進化し、子供も持っている。
同時に新たなマイナス面も現れ発展していく。近いうちに月での資源開発競争で、必ず国同士の衝突が生まれるだろう。スマホは誹謗中傷の道具になり痛ましい事件の直接の原因となることもある。しかし、私たちは一度使うようになった便利なモノを排除することはなく、すさまじい勢いで発展させていく。
チャットGPTの普及で一番気にかかるのは教育についてだ。レポートや感想文を書いたり、みんなで協議しあう場でIAを利用することが予想される。レポート等でそのまま提出しないまでもAIに発想を手伝ってもらうことは十分ありうる。また、協議の場で「AIがそう言うのなら」と、決定をゆだねることが恒常的になれば私たちの想像力や総合的な判断力は減退する。
私たちの世界では、モノのマイナス面である危険性の回避は、使用者たちの判断に委ねられ、トラブルの発生は個々人の自己責任に帰結する。極端な例だが、核兵器だってそうだろう。
数直線にたとえよう。プラスの面が増加すると同量のマイナス面が潜在的にも顕在的にも存在し、支点ゼロを中心にバランスをとるには、しっかりした倫理観が必要である。先日G7では「責任あるAI」の実現に向けて合意が交わされたそうだが、具体策が急がれる。

2023年3月30日木曜日

2023年度開校に向けて

  









文科省の指導要領に「・・・未来を拓く主体性のある日本人を育成・・・」「・・・責任感の育成を重視する・・・」とある。主体的に行動すること、そして行動の結果に責任を持つことは高校生の諸君や私たち皆が生きていくうえで最も重要なことだと思う。
 大学受験が終わって、生徒を送り出し、迎え入れるこの時期には志向館が掲げる教育のあり方を考えることが多い。保護者の方を前にしたスピーチや塾、予備校の入館案内の文言を見直す機会が増えるからだろう。
 志向館の「志」は「こころざし」「向」は「追求と努力」。「志向」するところに真の学生の姿がある。結果は自己責任である。不満な結果は自分以外のもののせいにしたがるが、時間がたつと我が身にふりかかったことは我が身で受け止める以外にないことを悟る。
 志向館では4月12日から2023年度の大学受験予備校が開講する。高校3年間やこれまでの学習結果に納得できない若者たちが集まる。安易に納得して自分の「志」を変え、大勢の流れに身を任すよりずっといい。
 皆、色々な顔をしている。ニコリともしない子、やたらニコニコして「どうかよろしく」アピールの子。様々な表情の奥に共通して主体性がある。結果を受け止め、もう一度自身の努力をもって志向する。己が決めた己に対する責任を果たすのだ。勇気ある決断をした若者の未来を全力で応援したい。