志向館の生徒でなくてほっとした。ある予備校生が携帯を利用して、試験中、目の前にある試験問題をヤフーの「知恵袋」に送って解答の依頼をした。「知恵袋」は早々に解答を公表し、試験中の少年はその解答を参考に問題を解いた。複雑なからくりは無かった。解答が同サイトに残っている限り、事件となるのは時間の問題である。悪気があったとか無かったという問題ではないだろう。もっと幼い子どもでも思いつくかもしれない。私のこの事件の第一印象は「なぜ?」「大学受験会場とはこんなにスキだらけなのか」という大学に対する不信感である。ある有名大学は「試験当日の状況」を克明に新聞に記載した。しかし、この記事の中に試験の監督者の配置、電子機器を使用した具体的な不正防止策はなかった。テレビで国大協の関係者の協議が報道される。みんな深刻な面持ちだ。少年は偽計業務妨害の罪で逮捕された。威力妨害なら大学時代によく出てきたが、偽計はあまり聞かない。あれだけたくさんの大学の関係者を深刻にさせたら、やはり逮捕なのか。おそらく検察側も立件できず、不起訴処分だろうが逮捕だけはしてみたというところか。
大学受験は子どもたちの肉体的、精神的な極限である。今回の事件など想定されて当然であろう。少年の肩を持つわけではないが気持ちはわかる。26年間高校生を扱ってきた私でなくても、わらをもすがりたくなる状況での受験生の精神状態は予想はつくだろう。マスコミの皆さんも受験に挑む精神的プレッシャーを知っているなら、その子の家庭環境や生活状況などを克明に調べ報道するより、誰でも簡単に不正行為ができる試験場を作っている大学の落ち度にもっと目を向けてはどうか。
最後に私が一番気になったのは、新聞に記載された「試験当日の状況」の末筆に「67人の受験生が途中でトイレにいった」とあった。67人もの受験生はトイレで用を足しただけだったのだろうか。